興奮収縮連関の機能制御に直接関わる筋細胞内膜系には、横行小管(T)系及び筋小胞体(SR)と呼ばれる2種類があり、筋原線維周囲を包み込むように位置している。T管とSRは骨格筋細胞の決まった位置でtriadと呼ばれる内膜複合体を形成する。また、triadには2種類のCa^<2+>チャンネル(dihydropyridine receptorとryanodine receptor)が存在し、興奮収縮連関の一連の過程の中でCa^<2+>放出機構の一翼を担っている。筋細胞内膜系及びCa^<2+>チャンネルは、発育、運動、不活動等に伴い比較的容易にその構造様式を変化させることで興奮収縮連関の機能的変化に応答している。不活動に伴い筋細胞内膜系は発育に逆行する変化を示し、縦断方向のT管の増加、triadの方向及び位置の変化が観察される。さらに、不活動に伴う代償作用と考えられるpentad(2本のT管と3本のSR終末槽)あるいはheptad(3本のT管と4本のSR終末槽)といった内膜系の特殊構造体の出現も観察される。Ca^<2+>チャンネルについても構造あるいは配列の乱れが生じ、内膜系の構造の乱れと共に、収縮機能低下の要因となるものと推察される。長期間の運動トレーニングでは収縮速度の変化、酵素活性値の上昇、等の機能的変化が報告されている。しかし、長期間の運動トレーニングでは、筋細胞内膜系及びCa^<2+>チャンネルの構造並びに形態的変化は観察されなかったことから、電子顕微鏡を用いてもなお捕らえることができない分子レベルでの構造的変化が生じるものと推察される。収縮蛋白質の構造崩壊を引き起こすことが知られている伸張性筋収縮を伴う下り走を行わせたラット骨格筋では、筋細胞内膜系の崩壊かつ新生が観察される。このように、筋細胞内膜系及びCa^<2+>チャンネルは活動や不活動、等の外的刺激に対して比較的容易にその構造、形態的特徴を変化させることで機能の変化を引き起こし、極めて合目的に外的刺激に対して適応しているものと考えられる。
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