研究概要 |
1.日本列島の代表的な山地の発達史から,成長曲線を描き,以下の3タイプを識別した.(1)中新世には安定していたが,鮮新世に入り急速な隆起に転じたもの:フォッサマグナ周辺の高い山地,外帯山地.(2)中新世〜前期鮮新世には沈降していた海域が,その後急速に隆起して陸化,山地化したもの:東北日本,フォッサマグナに例が多い.(3)先中新世に隆起したが,中新世以降は安定な山地が持続してきたもの:九州北部の山地 2.中部山岳地域の形成史解明に有効な広域テフラが2層(富山の谷口テフラと松本の大峰テフラ)明かとなり,分布・噴出時代も分かった.その結果,中部山岳では,飛騨山地の隆起が鮮新世に遡り,赤石山地は前期更新世中葉から始まり,木曽山地の隆起はかなり遅れて,前期更新世末から中期更新世に活発化したことが分かった. 3.伊豆の衝突で隆起した丹沢・足柄山地の変動特性の一部が明かとなった.約20-30万年前以降,神縄断層の活動は停止し,他の断層(日向および平山断層など)にジャンプするようになった. 4.西頸城山地では,鮮新・更新統中の4枚のテフラが飛騨山地の大規模火砕流と対比された.この結果,2.7Ma頃,飛騨と新潟を分ける西頸城山地の隆起が始まったことが分かった. 5.黒部川段丘の傾動速度を求め,最近速度が低下していることを示した.これは,飛騨山地が中期更新世に今より激しく隆起していたことを示す. 6.呉羽山丘陵に分布するテフラが飛騨山脈の火砕流堆積物に対比される可能性を見出した. 7.濃尾平野の大深度ボーリングコアを再検討し,濃尾傾動運動は前期更新世に始まり,中期更新世以降活発化したことを示した. 8.西南日本の鮮新・更新統のテフラ層序・編年から,九州・四国山地は2-3Maに隆起を開始したことが分かった.これは,PHSの斜め沈み込みとアムールプレートの東進で東西圧縮が増大した結果である.
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