研究概要 |
現在までに、牛枝肉、健康牛の糞便、下痢症患者の糞便から、約100株の大腸菌O157を分離し、その遺伝的多様性をパルスフィールドゲル電気泳動により確認した。これらの大腸菌O157を用いて、低温保存食品中での増殖を検討した。種々の野菜抽出液に大腸菌O157を接種し、低温(8℃)で3日間、または室温で1日間保存した時、室温では実験に用いた全ての野菜抽出液において細菌数の増加が見られたが、低温保存した場合には大根とニンジンにおいて生育の抑制が認められた。また、大根とニンジンの抽出液を121℃で15分間加熱した場合にも効果は変わらなかった。一方、牛肉等は、他の食品に比べて大腸菌O157により汚染される可能性が高いため、牛肉、鳥肉、豚肉に大腸菌O157を接種し、ラップ包装を行って10℃で保存した場合の増殖を調べた。その結果、大腸菌O157は、これら肉類の表面で緩やかに増殖し、保存1週間で400倍〜10,000倍に増殖した。豚肉中での増殖が最も早く、次いで、鳥肉、牛肉の順となり、牛肉以外の肉類も2次汚染の可能性が高いと考えられた。また、野菜類に直接大腸菌O157を接種後、ラップ包装を行い10℃で保存した場合には、肉類に比べて増殖速度は劣るものの、10日間の保存で100〜1000倍に細胞数が増加した。これらの食品中で増殖した大腸菌O157のべ口毒素生産性を現在解析中である。
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