近年、食品成分が如何に脳機能を活性化させるかが注目されている。脳機能において重要な役割をはたすのは約30種類の神経伝達物質であり、その幾つかは前駆物質(アミノ酸)や栄養条件で影響を受ける。これまで、脳内神経伝達物質(セロトニン・カテコールアミン・アセチルコリンなど)を各種栄養条件で検討し、比較的容易に変動すること、またある種の行動にも影響の出ることを明らかにした。本研究では、食事と精神機能(気分)との関連を解析することを目的とし、脳各部位の各種神経伝達物質の変動と脳波(α波、β波など)を測定することにより、従来全く調べられてこなかった「栄養と精神活動」との関連を明らかにする目的で行った。 脳内神経伝達物質量の変動:ラットに、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、サッカリンを経口投与し、2時間後の血中アミノ酸組成及び脳各部位(視床下部、海馬、扁挑体、線条体、大脳皮質など)のモノアミンを測定した。脳の幾つかの部位でカテコールアミン及び5-ヒドロキシインドール類が変化しており、現在、その変動と血糖及びアミノ酸との関連を解析中である。 精神活動(不安感と脳波解析)の変動;被験者には測定前の食事を抜いてもらい、各種の糖を摂取させ、その後の体温、脈拍を簡易体温計で測定し、脳波測定ソフトコンピューターを用い、定常状態の脳波測定を行った。次いで、クレペリン検査でストレスを負荷し、体温、脈拍を測定後、再び脳波測定を行った。一方、質問紙法の一つであるMMPIを実施し、被験者の不安感なども同時に検討した。その結果、対照群と比較すると、糖を摂取した場合の方がクレペリン検査での簡単な計算がスムーズに出来ると感じた人が多かった。α波を中心としたストレス負荷後の脳波は、現在、解析中である。
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