考古遺物の絶対年代測定として白色鉱物からのルミネッセンス年代測定の基礎研究を行った。 焼成考古遺物中に含まれている石英粒子からの天然放射線由来の蓄積放射線損傷量を試料の加熱に伴う赤色熱ルミネッセンス(RTL)強度として観測して年代を評価するRTL年代測定法を検討した。 縄文以降の若い年代の焼成試料からの石英粒子は蓄積線量が少ないため弱いTL発光強度しか得られず、計数統計の良好な結果がこれまで得られなかった。このような若い焼成試料に対して信頼性の高いRTL年代測定を適用するためにTL測定装置の高感度化をまず初めに行った。熱ルミネッセンス(TL)測定装置のヒーター部分(測定用試料を加熱する部分)と光電子増培管(赤色TL検出用)との間に、クラッドロッド型ライトパイプ(直径11mm、長さ57mmの石英柱状で光を通すコア部と光を反射するクラッド部分を有する)をはさむことによって光の検出効率の向上をはかるとともに、黒体放射由来のバックグラウンドを黒雲母板スペーサでカバーしたり、新たな赤外線吸収フィルターを組み合わせ減少させることに成功した。 この高感度RTL測定装置を使用し、縄文式土器片からの抽出石英粒子に粗粒子法を適用した。付加線量応答曲線より求めた蓄積線量値と、土器片とともに採取した関連土壌の天然放射能測定からの年間線量をもとに年代を評価した。ここで得られたTL年代値は約3800年前、約5700年前という年代であり、^<14>C法により約5000年前と年代付けされている火山灰層との層序的関係とよく一致した。縄文土器より新しい4世紀以降の須恵器や窯跡試料からもRTLを普遍的に見出したので、これらの原料としての粘土の焼成に伴うTL特性変化を利用した被熱温度の情報を評価できた。更には、江戸時代以降に焼成された伊万里陶器片からの熱ルミネッセンス特性も調べてきている。
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