研究概要 |
平成10年度における研究では,1947年1月から3月までのConference Reportに依拠して,算数科数学科の学習指導要領がCI&Eによる最終的承認を受け,印刷に廻される直前までの経緯が明らかにされた.平成11年度の研究では,この最終的承認を受けた学習指導要領(算数科数学科編)の内容にCI&Eがどの程度の影響を与えたのかが考察された.その考察に当っては,1984年4月9日にハリー・レイが和田義信に対して行なったインタビュー記録を使用した.その結果,和田は,ヴァージニア・コース・オブ・スタディなどに依拠せず,戦前に蓄積された日本の算数・数学教育の内容と方針に沿って学習指導要領の内容を定めたと考えられる.したがって,昭和22年の学習指導要領に対するCI&Eの影響は微々たるものであったと言える. 平成11年度のもう一つの研究成果は,昭和21年度に使用された暫定算数教科書の成立に関する内容である.従来の研究では,日本側の史料にもとづいてその時代考証がなされていたが,筆者は国立国会図書館憲政資料室所蔵のGHQ/SCAP文書(いわゆる「在米史料」)の中から,暫定算数教科書の編集,CI&E当局による承認などに関する史料にもとづいて時代考証を行った.その結果,従来の研究に対して,次の諸点が新たに付加されることが明らかになった. (1)『カズノホン四』と『初等科算数六』に関する翻刻印刷日は修正されねばならない。 (2)暫定算数教科書の成立は前期用よりも後期用のほうが先行して執筆・編集された.これは,教科書の英訳を援助した機関の作業進捗状況によるものと考えられる.
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