研究概要 |
今年度は従来型の多角的書字行動観察システムの小型化およびタブレットを用いた新システムの開発を進め、ひらがな書字技能の獲得に関する実践事例への応用的検討を行った。また,関連して図形模写の習熟,漢字書字の習熟についても調査的検討を行った。 1.実験的検討:ひらがな書字に困難さを有する小学生男児で視覚入力の問題も併存する事例。導入したシステム等により多角的認知行動解析を適用し、手元、全体の様子、筆圧波形を記録した。課題は、平仮名課題は「き,た,ち,つ,て,と」の6種類と図形模写課題(三角、点結び)を用いた。平仮名課題は,横線,右下がり線,左下がり線,右曲がり線,左曲がり線の5種類の構成要素に分けて検討し,さらになぞり,視写各事態での相違,援助手段の効果についても検討した。 2.実態調査:実態調査では、T小学校に在籍する2年生(81名)を対象にひらがな模写課題(「ふ」),図形模写課題(菱形、内接した四角形)、1年生配当漢字から抽出した漢字20題を課したほか、担任教師から書き誤りの多かった児童の様子について聞き取りを行った。 結果、実験的検討では、曲線要素の単位時間あたりの筆圧積分植がなぞり事態で増大し,この要素でのなぞりの必要性が確認された。形態上は左曲がり線の獲得により多くの困難がみられたが,手をそえて援助することで大きく改善された。今回の結果より,筆圧の増大が確実な運筆能力の向上に関与する様相が確認されたほか,援助効果の検討に有効なことが示唆された。実態調査では、小学校低学年の児童は漢字については不完全字形の誤りが多くみられたほか,平仮名模写課題の困難な児童に図形模写課題の困難が併存するケースが複数みられ,その関連性が示唆された。
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