本研究では、日本語または英語の学習者が和英辞書を利用する際にこれを自動支援するためのシステムのプロトタイプの構築に向けて、形態素解析・辞書情報処理・ユーザ・インターフェースなどの方式の確立を目指している。 (1)用言によって決定される基本的な補語の数とその品詞、及び文中の意味によってそれが変化する複数補語構造(polymorphism)を用言の辞書情報として記述するための素性構造の方式についての論文を収集し、理論的な枠組みを比較検討した。本研究では用言の多義性(polysemy)が補語構造の変化を促すという立場を取り、用言とその補語が文中で派生的な意味を持つ時に起こる補語構造の変化をタイプ変化(type coercion)や同時合成(co-composition)などの語彙規則の適用として形式化するための理論的研究を行った。統語解析中に適用される語彙解則のコンピュータへの実装は、今後の課題としたい。 (2)ドイツ語の主題化構文や関係詞節などをテストケースとしてHPSG文法理論の枠組みで分析した。従来からドイツ語の分析研究の蓄積があったこと、及びドイツ語解析システムTROLLに解析規則を実装することが可能だったため、ドイツ語をテストケースとして扱った。 (3)'99LSA summer Institute (アメリカ言語学会夏期講習)にて、上記文献調査、疑問文の意味表記の形式化についての討論、情報交換を行った。
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