本研究では、日本語または英語の学習者が和英辞書を利用する際にこれを自動支援するためのシステムのプロトタイプの構築に向けて、形態素解析・辞書情報処理・ユーザ・インターフェースなどの方式の確立を目指し基礎研究を行った。 (1)辞書検索の自動支援のために、特定の文脈における単語の形態と意味を決定するための形態素・意味解析の理論的な方式を研究した。特に、名詞+名詞で構成される複合名詞について、構成要素となる名詞の意味にタイプ変化(type coercion)や同時合成(co-composition)などの語彙規則を適用し、またそれらの名詞の意味結合をいくつかの代表的なタイプに分類することで複合名詞の意味生成方式を考案し、その語彙規則の形式化に向けた理論的研究を行った。 (2)大学院生の研究協力者の協力を得て、すでに稼働中の形態素解析システムを拡張することによって、上記語彙規則のコンピュータ上での実装と動作試験を行った。意味結合のタイプについての情報を構成要素となる名詞の辞書情報として辞書に記述することで、従来の単一化の操作のみをもちいて複合名詞が構成されるようにした。 (3)2000 Berkeley Formal Grammar Conferenceに参加し、語彙規則に基づく疑問文解析、および埋め込み疑問分の意味分類とその表記の仕方についての研究発表を行うとともに、最新の研究の動向調査を行い、計算言語学の研究者と意見交換・交流を計った。
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