聴覚皮質における音声特徴抽出および音声認識機構の研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10480068
• 研究機関: 豊橋技術科学大学
• 研究代表者: 堀川 順生 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (50114781)
• 研究分担者: 山口 陽子 東京電機大学, 理工学部, 教授 (00158122)
• キーワード: 聴覚皮質 / 音声情報表現 / 光学的計測 / 神経回路モデル / フォルマント / 活動伝播性 / 側抑制

研究概要

聴覚皮質における音声情報表現を調べることを目的として、1.刺激音に動物の音声やその成分音及び合成半母音に対するモルモット聴覚皮質の活動を、光学的計測装置(空間分解能250μm、時間分解能0.58ms)を用いて時空間的に計測すること、および、2.入力信号のソナグラムに依存した波動伝播性をもつ山口らの神経回路モデルについて、計算機で解析することを行なった。
1. モルモットの一次聴覚皮質には音の周波数が規則的に表示されており、純音に対する活動は皮質の特定の位置にバンド状に現れ、皮質を伝播していく。モルモットの鳴き声は周波数が変化する多くの高調波をもつが、この鳴き声に対する皮質活動は、鳴き声のそれぞれの周波数成分に対応する皮質の各周波数バンドにおいて活動が経時的に起きるという経過をとる。音の周波数が変化すると、活動は各周波数バンドを横切る方向に移動する。高調波成分に対する活動は、互いに抑制性および興奮性の相互作用をおこす。この相互作用が音声認識にどのように関与するかを神経回路モデルを考慮しながら今後検討する。
2. 神経回路モデルにおいてその伝播性の分岐特性について定量的に計算機実験を行った。入力信号は音声を模擬した簡単化したフォルマント信号を用いた。その結果、複数フォルマントの入力の場合、各フォルマントを周波数一定とした場合、入力開始のタイミングが異なってもある範囲で回路上伝播としては同期する。つまり入力のずれに安定に同時伝播として特徴を結合する能力があるこがわかった。この結合性は、回路ユニットの隣接興奮と側抑制の範囲に大きく影響を受ける。音声認識の安定性のためには側抑制範囲が隣接興奮の範囲より大きいことが望ましいことがわかった。入力信号が子音に対応するような過渡的な性質をもつ場合について、これらの性質がどのように成り立つこを今後さらに検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Horikawa,J.,Nasu,M.and Taniguchi,I.: "Optical recording of responses to frequency-modulated sounds in the auditory cortex." Neuro Rep.9. 799-802 (1998)
• [文献書誌] 堀川順生、谷口郁雄: "光学測定によるモルモット聴覚野の音刺激依存活動" 生物物理. 38. 254-257 (1998)
• [文献書誌] Hosokawa,Y.,Horikawa,J.et al.: "Anisotropic neural interaction in the primary auditory cortex of guinea pigs with sound stimulation." Neuro Rep.9. 3421-3425 (1998)
• [文献書誌] 堀川順生: "電位感受性色素法による脳活動の可視化" 脳の科学. 20. 903-906 (1998)
• [文献書誌] Y.Yamaguchi: "Dynamical Linking and Emergent Unification of Information,in" Toward a science of consciousness “Tucson III". 169. 91 (1998)
• [文献書誌] Y.Yamaguchi,Y.Kanzaka,F.et al.: "Bifurcation of Wave Propagation as a Base of Dynamical Linking in Auditory Recognition" The Fifth International Conference on Neural Informaion Processing. 1426-1429 (1998)