研究概要 |
本研究では、人のコミュニティの中で,相異なる要求をもった構成員がコンピュータネットワークを利用する際に,それらの要求をよりよく反映し,かつ限りあるネットワーク資源を有効に利用するための手法として,ミクロ経済学で提案されてきた価格調整機構をベースとしたものを提案してきた.この枠組においては,利用者の選好を代表する消費者エージェントと,アプリケーションプログラムのパフォーマンスを代表する生産者エージェントとが自己の利益を最大化するような入札を繰返すことによって,無駄のないパレート最適な割当てを実現する. 本研究では,これまで構成してきた市場モデルにもとづいて,イントラネット大のネットワーク制御を目的とするシステムQoS Marketの開発・評価を行った. このシステムでは特に,市場計算のための入札・価格情報の通知に大きな通信コストを要する.消費者エージェントや生産者エージェントをサーバ内に集中的に実装すればこの問題は回避できるが,その一方で,本来利用者の私的情報がサーバという公的な場所にさらされ,プライバシー保護の観点上問題がある. 上記問題への対策として,消費者エージェントや生産者エージェントを,その実行中に計算機間を移動する移動エージェントとして実装するアプローチをとり,QoS Marketシステムの性能向上を図った. QoS Marketシステム上で移動エージェントを用いた場合と用いない場合とで比較実験を行い、この効果の比較的得にくいと考えられる小規模環境においても,5倍以上の計算性能の向上が見られることがわかった.
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