研究概要 |
本研究は日本手話と日本語の間の相互翻訳をコンピュータで行い,聴覚障害者のコミュニケーション環境を改善することを目標とするものである. 本年度は,主として,手話で重要な位置を占める表情や頭部運動の分析を行って,その機能を推定するとともに,それを翻訳システムに導入して聴覚障害者に分かりやすく自然な手話アニメーションを合成するための基礎研究,手話をニューラルネットワークとオートマトンを組合わせて認識するための基本プログラムの作成,手話アニメーションに用いる新しい人体モデルの構築を行った.手話アニメーションで表現された手話に表情や頭部運動,視線移動などを導入した場合に手話認識率がどのくらい向上するかの評価実験も試み,手の運動が滑らかで,自然であれば,それとの相乗効果が生じることを確認した.また相互翻訳に必要となる千話辞書の語彙を相当数増やして,画像合成可能な手話文の種類を拡大した. さらに翻訳システムの用途として考えている,聴覚障害者を対象とする医療検査の指示については,基礎調査を行うとともに,胃のレントゲン撮影時に必要な検査技師からの指示文を収集し,それを手話アニメーションで表現する作業と,簡単な予備評価実験を行った.この場合,日常生活で使用されない語彙が相当多いため,その表現法と実験法には最新の注意を払う必要があるとの結論を得た.
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