研究概要 |
名詞語義の量的構造の調査では、重要語と見なせる和語名詞(約1,000語)の半数が、英語訳語の多義を持ち、その平均値は3であること、また、その解消に単語意味属性の情報を使用すれば、平均訳語多義は1.7に減少し、訳語選択の正解率は、ランダム選択の場合に比べて2倍の78%に向上する可能性のあることが分かった。 また、名詞の意味的用法の調査では、新聞記事1万文の日英対訳コーパスを対象に、英訳語の多義構造を調べた結果は、おおよそ以下の通りである。重要名詞1,000語中、新聞記事で使用された語は、約750語であった。そのうち、50回以上出現した名詞106語を対象に、各見出し語毎に対応する英語表現を調べ、訳語の構成割合によって下記のように分類した。 (1)多義のない名詞(2語) (2)訳語がほぼ一意に決定できる名詞(13語) (3)有力な訳語が存在する名詞(32語) (4)同程度の頻度の訳語が複数存在する名詞(11語) (5)訳されないことが多い名詞 (7語) (6)名詞以外に訳される名詞 (41語) これによると、出現頻度の高い名詞では、多義のないものは少ない。また、(5),(6)が45%を占めるが、これらは、翻訳辞典の使えない名詞であり、それぞれの性質の応じた訳し方の研究が必要である。従って、残りの名詞((3)と(4)で全体の40%)が訳語選択技術のカバーすべき範囲と言うことができる。 そこで、単語意味属性の適用効果を調べるため、(3)と(4)の名詞、43語について、意味属性が決まったときの多義数の変化を調べると、平均多義数は、2.91から1.58に減少し、平均正解率は、46.5%から83.3%に向上することが分かった。
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