研究概要 |
1.階層的注視点制御モデル:人間のような柔軟な視覚情報処理を実現する計算モデルを検討し,5層からなる階層的注視点制御モデルを提案した.このモデルは,画像上での追跡処理に相当するウィンドウ層を最下位層とし,その上にオブジェクト層,ワールド層,ステート層,ミッション層を持つ.このモデルを用いることにより,画像情報に基づくボトムアップ処理と,処理対象に関する知識や処理状況に関する大局的判断に基づくトップダウン処理を相補的に実現する.これにより,画像情報のみから注視点を切り替えるのではなく,複数の注視点からなる集合や集合間の関係,対象に関する高次の知識を用いた柔軟な注視点制御を実現できる.なお,各層の詳細な定義は問題により設計するものとするが,特に,オブジェクトの選択,ワールド層における大局的判断の実現,ステート層における状態の定義は重要な役割を果たす. 2.注視点制御による複雑環境下での人物追跡:階層的注視点制御モデルを用いて,単眼視による複雑環境下での人物追跡系を構成した.具体的には,単純なテンプレート追跡と複数人物が交差するような複雑な状況を別の状態として定義し,状態遷移による効率的注視点制御を実現した.特に,ワールド層において,特徴空間と3次元空間の両者を考え,直積空間中での人物の相対位置により,追跡法が切り替えられる点が特徴的である. 3.注視点制御によるステレオ動作認識:階層的注視点制御モデルを用いて,ステレオ動画像による人物動作解析を行った.この系では,人物像から背景除去、細線化を行う処理をウィンドウ層が担当し,抽出されたスティックのステレオ処理結果を元にした3次元解釈を階層的制御で実現する.人物構造モデルとステレオ復元結果の対応付けを,信頼度の高い部分から順次進めることが可能であり,動作辞書を利用した解釈などへの拡張性を持つ.
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