研究概要 |
本研究,ホワイトカラーの業務分析の方法論,ならびにそれをサポートするツールを構築することを目的とする.本研究では,これらの方法論とサポート・ツールを利用して,ホワイトカラー職種の中でも特に,設計や開発,生産技術,生産管理業務といった専門的技術職を対象に業務分析を実施し,業務設計・改善といった生産性向上を支援していくものである.このような研究目的に対して,今年度の研究成果としていられた知見は以下に記す通りである. (1)昨年度に方法論を構築した,眼球運動解析を用いた業務中の情報利用を中心とする業務分析を実施した.その対象として,新幹線の運転業務,テレビ・コマーシャル作成者などに対して適用した.その結果,テレビ・コマーシャル作成者の意図に対する視聴者の見方との相違,ならびにそれらに対するコマーシャル設計パラメータの影響などを抽出できることが,この分析法には明らかになった.また,新幹線運動手の運動業務については,現状運動業務にここで提案する方法を適用することにより業務分析を実施するとともに,そこで得られた業務プロセスをもとに,新ATCに対応する新しいマン-マシン・インタフェースの設計への活用法も示唆している. (2)これまでに構築したホワイトカラーの業務分析技法の分析結果をもとに,技術的専門職に対する業務分析・改善に対する指針,ガイドラインをまとめた,ここでは特に,業務設計の新たなパラダイムとして「人間中心型」アプローチを提唱し,その効果を確認するためのケーススタディも実施した.ここで提案する人間中心型アプローチとは,従業員の能力・知識の増進を適切な業務分析に基づき向上させるとともに,従業員の望む業務環境,業務内容,仕事の仕方を与えることにより,従業員のモチベーションやモラールの向上,そして仕事や組織に対する満足度や信頼感を上げることを狙うものである.このような精神的・心理的な効用により,仕事に対する効率や質の向上を期待するのみならず,従業員の自発的な能力発揮や業務の完全活動,そして知的生産性への向上を発揮する原動力を創り出そうというものである.このアプローチは,仕事の内容が多様.多岐にわたり,その進め方に大きな自由裁量が認められ,それらを事前に明確に適宜することのできない悪構造(ill-defined)という特徴をもつホワイトカラー業務には特に,うまくマッチするものである.
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