本研究では、エネルギー問題の有力な解決方法である核融合発電を実現するために、現在最も研究が進んでいるトカマク型核融合炉の定常運転に必要な、速波電流駆動用進行波型アンテナの開発及びアンテナから放射された速波の伝搬特性に関する研究を行った。 まず、昨年度開発した進行波コムラインアンテナ用結合計算コードの改良拡張を行い、本研究代表者が提案した進行波型スパイラルアンテナの結合特性の評価を行った。その計算コドを用いて両アンテナの結合特性の比較を行った結果、トロイダル方向には進行波だが、ポロイダル方向には定在波を用いる従来のコムラインアンテナに比べて、トロイダル方向のみならずポロイダル方向にも進行波を用いるスパイラルアンテナの方が、トロイダルプラズマの電流駆動にとって有害な表面波モードを励起しにくいことが判明した。また、JFT-2Mのポートサイズに合わせて設計、製作した高周波試験用スパイラルアンテナの電磁界分布測定を行い、ほぼ設計通りに遅波回路が製作できていることを確認した。次に、日本原子力研究所の非円形断面トカマク型核融合実験装置JFT-2Mにて、進行波型アンテナを用いた速波のビート波励起実験を行い、200.05MHzおよび199.95MHzの2つの速波を励起することで、進行波型アンテナから放射された波が100kHzのビート波を作ることを周辺の磁気プローブにより確認し、プラズマ内部のビート波の作るPonderomotive Potentialを350keVのタリウムイオンを用いた重イオンビームプローブを用いて世界で初めて測定することに成功した。同一のアンテナから放射されたほとんど同一の周波数を持つ2つの速波は、ほとんど同じ軌跡で伝搬するため、ビート波の電磁界分布が測定できると言うことは、プラズマ中の速波の電磁界分布の測定が可能であることを意味する。
|