研究課題/領域番号 |
10480108
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
核融合学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木村 晃彦 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (90195355)
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研究分担者 |
森下 和功 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助教授 (80282581)
長谷川 晃 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (80241545)
高橋 平七郎 北海道大学, エネルギー先端工学研究センター, 教授 (80001337)
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研究期間 (年度) |
1998 – 2001
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キーワード | ヘリウム / 捕獲 / 回復抑制 / マルテンサイト組織 / 熱的安定性 / 核融合炉材料 / 自己修復機能 / 高温強度 |
研究概要 |
本研究結果を以下に要約する。 1.ヘリウム効果:1)マルテンサイト鋼は、150℃において600atppmHeのイオン注入では脆化を生じない。注入後の焼鈍(600℃)では、ヘリウムバブルが成長するが、ヘリウムによる粒界脆化は発現しない。2)ヘリウムの存在は、照射硬化の回復を抑制する。 2.ヘリウム脆化抑制機構:マルテンサイト組織がヘリウムをマトリックス内の高密度転位、合金元素および析出物粒子界面に分散捕獲することにより、粒界への偏析を抑制するため。 3.照射硬化回復の抑制機構:ヘリウムが空孔型欠陥集合体の安定性を高め、分解による単空孔の生成を遅らせることにより、転位ループとの合体消滅を抑制するため。 これらの結果を受けて、マルテンサイト鋼の自己修復機能を提案した。 高濃度ヘリウムの存在は、空孔型欠陥集合体を熱的に安定化するため、スエリングの照射温度依存性におけるピーク温度を高温側にシフトさせると予測される。これに伴い、照射硬化および照射軟化の遷移温度も高温側にシフトすると考えられる。照射軟化はマルテンサイト組織の回復によるものであることから、ヘリウムの存在はマルテンサイト組織の回復を抑制することが期待された。本研究では、ヘリウムの昇温脱離挙動を調べた結果、1)転位はヘリウムを有効に捕獲する。2)Cr原子もヘリウムを捕獲する、ことを実証した。これは、マルテンサイト組織中に存在する高密度転位や照射によって形成される格子間型転位ループがヘリウムの有効な捕獲サイトとなり、消滅相手となる空孔型欠陥および自らの熱的安定性を向上させることにより、マルテンサイト組織の回復を抑制する機構を発現するに至っていると解釈することが可能である。 結論:マルテンサイト組織によるヘリウム捕獲と照射による転位ループの形成は、スエリングや照射硬化の発現温度を高温側にシフトさせ、照射脆化の発現温度域を高温度側に拡張させるというネガティブな効果を持つ一方で、自己機能により照射軟化を抑制し、高温強度を高めクリープ強度を高める可能性を持っことが示された。
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