研究概要 |
大強度でしかも数百keV以上の高速ヘリウム中性粒子ビームは,DTプラズマ中のアルファ粒子の診断用ビームとして有望視されている.さらに電流密度(相当値)が1〜2桁上がると,D^3He反応の加熱ビームとして利用できる.これらのビームはヘリウム負イオンビームを中性化して生成される.そこで本研究では,ヘリウム負イオン源の開発と,中性化法の基礎研究を行う. 本年度は,昨年度製作した実験装置を使用して,低仕事関数表面を実現する実験を行い,その表面に中性粒子ビームを入射した.低仕事関数表面はモリブデン表面にセシウム蒸気を塗布することにより得られるが,どの程度仕事関数が下がっているかをモニターするために,レーザー入射光電効果を利用する計測系を構築し,テスト実験をおこなった.現在までの実験結果では,光電効果信号の確認ができず,また負イオン量の増加も確認できないことから,仕事関数低下が十分でないとの結論に達した.そのために,セシウム蒸気塗布が有効にできるように装置全体の変更をおこなった.また,負イオン測定のためのウイーンフィルターに中性粒子が混在するという問題があり,新たに小型分析器を製作した.今後,新装置を用いて,ヘリウム負イオンの表面生成量の測定実験を開始する. 平行して,ヘリウム中間励起状態への衝突断面積の理論計算をおこなった.従来の計算よりも,高いエネルギー領域で,実験値により近い全断面積を得ることができた.
|