研究概要 |
本研究では,高速炉の局所閉塞事故に関して,燃焼ピン表面温度を決定づける閉塞物内の熱輸送現象を解明しその評価手法を構築するため,多孔質状閉塞物内部の熱流動場に関する実験研究を行った。閉塞形態として粒子充填型閉塞を想定し、試験部に球形ガラス粒子を充填した実験装置を製作した。閉塞内部の流動場の可視化計測手法を確立するために、ヨウ化ナトリウム(NaI)水溶液とパイレックスガラス球を用い,Nd-YAGレーザーを光源とし,NaI水溶液濃度を調整し屈折率を合わせる実験を行い,濃度56.9[wt%]とすればパイレックスガラス球の屈折率と一致することを確認した。1サブチャンネルに相当する簡易ループ試験装置を用いて本可視化手法の有用性を確認した上で、燃料集合体内の2つのサブチャンネルを模擬したテスト部に適用して,閉塞内部および健全流路内の流速分布について測定し,流動場のミクロ構造を明らかにした。閉塞部内では、充填粒子により流れが阻まれ当然、健全側流路より主流方向速度は小さくなるが、充填粒子間を流体が流れるため、合流、分岐流と言う特徴ある流れや渦発生の特徴が見られる。ついで、レーザ誘起蛍光法により閉塞物内部の温度分布を計測する手法について検討し,NaI水溶液中での適用性を確認した。簡易ループ試験装置に適用して、温度分布について測定した結果、閉塞物の後流では高温噴流が見られその後広い範囲で水温が上昇することが示された。これは、流動場の計測結果と考え合わせると、充填粒子の存在のために発生する層内の合流および分岐流が流体の混合を促進した結果であると考えられる。また、閉塞物およびその下流では、加熱壁面付近に高温領域が観察された。以上より、閉塞物は流体運動を妨げ、加熱壁面付近の流体温度を上昇させる。一方、その内部では流体混合を促進する動きをし、後流の幅広い領域で温度上昇を引き起こす働きをすると言える。
|