研究概要 |
本研究は、大型のBGOシンチレーション検出器を2台密着して向かい合わせて配置することによって原子核の崩壊に伴うβ線、β線の制動輻射及びβ、γ線の後方散乱もすべて吸収し崩壊エネルギーを決定することを目的としている。全吸収によって崩壊図式の情報なしに不安定核、特に生成量の非常に少ない新同位元素等の崩壊エネルギーを決定可能にすることが本検出器の特色である。 本年度は検出器を購入し、基礎特性として単色電子及び陽電子線に対する検出器の応答関数の測定を行うと同時に、EGS4を用いて電子及び陽電子線、γ線及び連続β線にたいする応答関数のシミュレーションを行った。実験は京大原子炉(KUR)及電子ライナック(KUR-LINAC)を用いてβ^-線源^<38>CI,β^+線源^<34m>Clをそれぞれ作成し、β線スペクトロメーターを用いて擬似的な単色電子及び陽電子を切り出して1、2、3、4MeVについて測定した。陽電子の応答関数は入射陽電子+511keVにピークが現れ、β^+崩壊の消滅光子は完全に吸収されβ^-崩壊と同様に扱えることがわかった。一方、シミュレーションの結果、10MeV程度の電子線に対しても80%程度の効率を持つことがわかり、未知核種のような崩壊エネルギーの大きい不安定核に対しても有効であることが示された。オフラインテストとして^<32>P、^<90>Sr/Y、^<68>Ge/Ga等の標準線源の測定、さらに日本原子力研究所FNSにおいて14MeV中性子照射によって生成する不安定核^<24>Na、^<56>Mn、^<62>Cu等の測定を行った。カリープロットから良い直線性が得られ検出器の有効性が示された。オンラインテストとして京大原子炉のオンライン同位体分離装置(KUR-ISOL)に専用のチェンバーを作成して設置し^<91,92>Rb等の高い崩壊エネルギー(7〜8MeV)を持つ不安定核の測定を行った。データは現在解析中である。
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