研究概要 |
本研究では、アクチニド核種の中でも必ずしも核データとして十分ではないAm-243,Pa-231,Th-229,Th-230及びNp-237を取り上げ、まず、それらの中性子核データの実測値及び評価済核データの現状調査を行った。 次に、京都大学原子炉実験所の46MeV電子線型加速器(ライナック)と組み合わせた鉛スペクトロメータ(KULS)を用いて、10keV以下の領域におけるAm-243,Pa-231,Th-229,Th-230の核分裂断面積とNp-237の中性子捕獲断面積を測定した。前者では、各試料の電着膜と中性子束/スペクトル測定に用いたU-235電着膜を背中合わせ型(BTB)として封入した核分裂電離箱を、後者では捕獲γ線測定にアルゴンガス比例計数管、中性子束/スペクトル測定にBF_3比例計数管を用いた。Np-237の実験では中性子自己遮蔽効果の補正を行った後、低エネルギー領域の標準的な断面積値に規格化した。従来の実測値、評価値について本実験で求めたそれぞれの結果と比較し、評価を行った。今回取り上げた核種・反応については従来実測データが存在しなかった核反応・領域もあり、本実験において新しいデータを提供することができた。 また、京大原子炉実験所のライナックと12mの飛行路を用いた飛行時間(TOF)分析実験では、0.01eV〜10keV領域における^<237>Np(n,γ)^<238>Np反応断面積を^<10>B(n,α)反応断面積に対する相対値として測定した。本実験では、中性子捕獲によって放出される即発ガンマ線をC_6D_6液体シンチレータによって、中性子束/スペクトルはBF_3比例計数管によって測定した。Np-237試料中における中性子の自己遮蔽効果を補正した後、得られた捕獲断面積の相対測定値を熱中性子(0.0253eV)の標準的な断面積値(181b)に規格化した。本実験結果をもとに従来の実験値、評価値に対して比較評価を加えた。^<237>Np(n,γ)^<238>Np反応断面積については、KULSによるデータとTOF法のデータをKULSのエネルギー分解能でなました結果を比較したところ、大きな共鳴領域において少し差異が見られたものの、全体によい一致を示した。
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