研究概要 |
本研究は放射線アポトーシスの(i)Ca^<2+>依存性経路のDNaseγ遺伝子と蛋白質,(ii)p53・Bax下流での未知なミトコンドリア(MT)制御の分子シグナル・機構の解明を目的とした. 1. DNaseγ遺伝子・蛋白質.ラット部分配列オリゴプローブを用い、ラットDNaseγ cDNAを,ついでλgtライブラリーからヒトDNaseγ cDNA(1.3kb)を単離し,pcD-hDNaseγを作成した、DNaseγ蛋白質は311アミノ酸からなり、ラットと約80%相同なDNaseドメインをもった.[Ca^<2+>]i増加によってDNaseγは活性化され、細胞及びin vitro再構成系において50%DNA断片化をおこした. 2. p53依存性MT経路.p53制御によるBax発現促進とBcl-2発現抑制をうけるヒトMolt-4とBlack93細胞では放射線アポトーシスに高感受性で、変異p53/Bcl-2(+)/Bax(-)のReh細胞は抵抗性であった.高感受性細胞の放射線アポトーシスの初期に過剰Bax蛋白質が細胞質からMTに転移し,MTのCyt-cやApo-2.7抗体反応性p37蛋白質を,MT膜電位(ΔΨm)低下に先行して細胞質に遊離した.Bax特異的MT膨化がおこり,従来提唱されたΔΨm低下を示す巨大孔の開口よりも重要であった.Cyt-c/Apaf1/procaspase-9複合体は先ずcaspase-9を,ついでcaspase-3を活性化し,caspase-3 activated DNase(CAD)を活性化した.細胞とin vitro再構成系でCADは放射線アポトーシスに約50%寄与した.よって,p53→Bax→MT膨化→Cyt-c遊離→caspase-9/-3活性化→CAD→DNA断片化という分子機構を発揮するp53依存性MT制御シグナル経路が解明できた.
|