p53依存性放射線アポトーシス経路においてBaxが促進するチトクロームc(Cytc)遊離のミトコンドリア(MT)制御機構を研究した。p53発現白血病細胞はX線アポトーシスに高感受性であるが、変異p53遺伝子をもつ細胞は抵抗性であった。照射後p53は高度に活性化(Ser-15 リン酸化と蓄積)され、Bcl-2を転写抑制し、Baxを促進した。また分離MTではBax量が約10倍(5Gy後6時間)に増え、Bcl-2とBcl-XLは時間依存性に減少した。MT外膜のVDACはBaxとBcl-XLを結合したが、Bcl-2とは有意に結合しなっかた。非照射細胞のMTはBcl-2またBcl-XLのイオンチャネルとBcl-XL/VDACチャネルをもち、MTホメオスタシスとCytcを保持した。分離MTでは照射直後より直線的にBcl-XL/VDACチャネルは経時的に減少し、Bax/VDACチャネルは増加した。このBax/VDACチャネルの増加に一致して、CytcはMTから遊離した。照射後3時間までの初期ではMT膨張は見られなかったので、初期の40%Cytc遊離はBax/VDACチャネルに依存した。照射後3〜6時間の後半期では内膜permeability transition(PT)poreの開口によるMT膨張がおこり、内膜電位(ΔΨ)の低下と残量Cytcの遊離が進行した。また後半期ではCytc遊離やPT pore開口などによる電子伝達系異常の結果、MTにおいてsuperoxide anionの産生が進行した。放射線アポトーシスのp53→Bax→MT経路において、初期の外膜Bax/VDACチャネルの機能的開口と後期の物理的MT破壊という2段階Cytc遊離機構が明らかになった。さらに、照射後Ca^<2+>依存性にアポトーシスとDNA断片化をおこすDNase γの遺伝子と蛋白質も明らかにした。
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