極成層雲を構成する氷晶によるオゾン破壊能力は、氷晶が酸性物質をどの程度取り込めるかに関わっている。不純物は氷格子中にはほとんど取り込まれないので、多結晶の氷晶の粒界などへの取り込みが重要である。今年度は、酸性物質を含む水からの氷結晶成長実験が可能な一方向実験装置を開発し、干渉系により成長中の氷結晶の界面での不純物濃度の測定を可能にした。干渉計による干渉縞画像は、計算機で画像処理することで不純物濃度の空間分布に変換することができる。今年度は、高速鋸の処理が可能である解析手法を開発した。これにより、界面近傍や結晶粒界の近傍などで局所的な不純物濃度の分布を高精度で解析することができ、さらにその時間変動も解析が可能となった。 一方向成長する氷結晶の界面前方では、成長とともに不純物が排斥されて不純物の拡散場が発達する。界面が安定で平らな場合には、不純物はほとんど全てが界面から排斥され、界面での不純物濃度は時間とともに増加する。しかし、界面前方に組成的過冷却が発生し、界面が不安定となって指状のパターンが発達し始めると界面での不純物濃度の増加速度が急激に減少することが明らかになった。これは、不純物が指状のセル構造の隙間に取り込まれるため、見かけ上の分配係数が大きくなったためと考えられる。 次年度以降、界面に沿った詳細な不純物濃度分布の解析を行い、結晶粒界における不純物取り込み能の成長速度依存性について解明する。今年度の実験で問題となったのが、界面近傍での濃度分布による対流の発生である。対流が発生すると界面濃度分布が乱され解析に影響を及ぼす。次年度以降この点にも中も注目して研究を実施する予定である。
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