研究概要 |
古川は、氷結晶の一方向成長実験を行い、界面のパターン発展と界面近傍での不純物の濃度場のその場観察を行った。界面近傍での不純物濃度分布のその場観察は通常の方法では困難であるが、高精度の干渉計を使用することで濃度場の観察が可能である。これにより、界面近傍での不純物濃度を定量的に決定することができ、氷結晶の成長に伴う不純物の取り込み量を決定できる。このような実験の結果、氷結晶の成長における界面での不純物(この場合、KCl,NaCl,HClなど)の見かけ上の偏析係数が0.3以上の極めて大きな値を取ることがわかった。氷と不純物物質との相図から推定される偏析係数(平衡状態)は、0.01以下であるので、不純物の氷結晶格子内への取り込みは期待できない。この計数値の違いは、氷結晶が成長することにより結晶粒界が生じ、ここに優先的に不純物が取り込まれたためである。上記の実験で得られるデータは、干渉縞画像が主なものである。この画像を処理して、濃度の分布に変換する必要があるが、横山は前年度までに開発した画像処理ソフトを今年度さらに改良し、高速での処理が可能であるシステムを構築した。その結果、1画像の処理が1〜2秒程度で終了することができ、得られた画像データのすべてを解析することが可能になった。これにより、氷/水界面近傍での濃度分布の時間変動の解析が初めて可能になった。界面近傍での不純物の移動の様子も解明できる見通しができ、新年度からは界面での不純物取り込みの動力学に関する研究を遂行する。 また、別な研究課題により透過光型の新しい偏光解析法による粒界での融解層検出の試みも行っているが、今年度にその手法がほぼ確立された。この手法を本研究に利用することで、粒界での不純物濃度の決定が可能になると考えられる。新年度はこの試みも実施する。
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