実際の農地に元素硫黄を施用して脱窒を行わせる場合を想定して、水田土壌カラムを作成した。カラム上部は密閉型とし、土壌のみを使用したカラムと、理論上525gの硝酸態窒素除去可能量の元素硫黄と土壌を混合したものを充填した。流入基質は硝酸態窒素約30mgN/Lのみとし、有機物は流入させていない。間隙水を各ポイントに埋め込んだ簡易土壌溶液採取器より採取し、流入水は混合槽より、流出水はカラム出口より採取した。 通水初期の脱窒反応が完全に進行しない時点では、亜酸化窒素の蓄積が見られた。これに対し、脱窒反応が完全に進行し始めると、N2Oの還元も進み、硫黄脱窒により硝酸態窒素及びN2O除去の両方が可能となった。しかし、脱窒反応が急速に進むに伴い、特に硫黄を埋め込んだ底部において、硫酸還元が起こり、硫化物が生成された。よって、それまで完全密閉としていたカラム上部を開放にした。それ以降の結果では、主に脱窒が進行していたカラム上部で、還元状態が不完全となったこと、硫黄脱窒の進行に伴いpHが低下したこと等の要因により、硝酸還元及び亜酸化窒素還元を阻害する結果がもたらされたのではないかと考えられる。 土壌中に硫黄を埋め込み、硫黄脱窒を行なわせることにより、十分な硝酸態窒素除去が可能であり、脱窒反応が十分に進行すれば、亜酸化窒素も小さく抑えられた。還元状態の進行に伴い、硫酸還元による硫化物の生成が起こることから、適切な脱窒量のコントロールが必要といえ、今後具体的な施用条件の検討が必要である。電子供与体の投与及び土壌のpH調整により脱窒能の促進及び亜酸化窒素発生割合の低下が可能であるが、特に硫黄脱窒を進めることで、有機物を唯一の電子供与体とする場合より、発生する亜酸化窒素量が低く抑えられる可能性が示され、亜酸化窒素抑制の見地からみて、硫黄脱窒が有効な手段となりうるのではないかと考えられた。
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