研究概要 |
昨年度の魚あらの肉部および腑に関する研究に引き続き,本年度は魚あらの頭部および背骨の亜臨界加水分解反応を行い乳酸をはじめとする各種有機物質を生産するための最適条件の探索を行った。反応器としてSUS316 3/8インチ管(内容積約7cm^3)を使用し、温度、圧力を変化させて実験を行った。また、生成物である有機酸のイオン交換体(市販の強塩基性陰イオン交換樹脂および超多孔性キトサンビーズ)への吸着平衡関係と粒子内拡散速度の解析も行った。本年度の研究により以下の成果が得られた。 (1)骨100トンを473K,5分間亜臨界水抽出によりリン酸0.64トン,乳酸0.44トン抽出分離する。その後,543K,20分間亜臨界水加水分解を行うと,骨25トン,ピログルタミン酸1.7トン,アラニン0.8トン,グリシン0.8トン,シスチン0.5トン,油1.8トンが得られた。 また,頭部100トンから,骨1.5トン,ピログルタミン酸0.23トン,リン酸0.07トン,乳酸0.03トン,油4.9トン,油脂0.2トンが生成された。 (2)油相にはDHA、EPAなど有用かつ高価な不飽和脂肪酸が含まれていた。 (3)生成物に対する最適な反応温度が異なっており、反応条件を変えて各生成物を逐次的に生産する複合プロセスの構築が可能である。 (4)イオン交換体DIAION WA30およびキトサンビーズへの乳酸の吸着平衡関係はLangmuir式で精度よく相関できた。 (5)乳酸の粒子内拡散はポア拡散と表面拡散の並列モデルで説明できた。吸着速度はキトサンビーズの方がDIAION WA30に比べかなり速かったため,有機酸の分離にはキトサンビーズが有効であることが明らかになった。
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