超活性ポリエーテル化合物マイトトキシン(MTX)は、細胞内へのCa2+流入を顕著に促進することによって強力な生理活性を示すことが知られている。しかしながら、単離されてから20年以上経った現在においてなおMTXの活性発現機構は解明されておらず、細胞内の新たな情報伝達経路の関与が予想されている。すでに我々は本基盤研究においてMTXが細胞質成分を含まないゴースト赤血球に対しても顕著なCa^<2+>流入活性を示し、この作用が疎水性梯子状ポリエーテルであるブレベトキシンA、Bによって阻害を受けることを明らかにした。今回、MTXが結合する赤血球細胞膜上の受容体を光標識し、MTX結合タンパク質を直接精製することを試みたので報告する。 MTXを光親和性基とビオチンを有するマレイミド型ジエノフィルと反応させた。この反応混合物をLC-ESIMSを用いてモニターし、原料であるマイトトキシンの消失、MTX分子末端のジエン部分とリガンドのマレイミド部分がDiels-Alder反応した付加体(C_<206>H_<307>F_3N_8O_<77>S_3Na_2)の生成を確認した。得られたMTX誘導体を用い、赤血球細胞に対して光親和性標識実験を行った。光照射後、SDS電気泳動を行い、ピオチンを指標にMTX結合タンパク質の有無を調べた。その結果、プレベトキシンB共存下、MTX誘導体による標識が消失するタンパク質を確認できた。以上の結果より、このタンパク質がMTXによるCa^<2+>流入機構を解明する手がかりになるものと推定された。
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