海産ポリエーテル化合物マイトトキシンやパリトキシンは、細胞膜に細胞内へのCa2+流入を顕著に促進することによって強力な生理活性を示すことが知られている。しかしながら、単離されてから20年以上経った現在においてなおこれら生理活性物質の作用発現機構は解明されていない。そこで、われわれは、膜に結合してイオン流入を促進する物質として抗真菌剤・アンフォテリシンB(AmBと略称)に着目した。本基盤研究では、AmBの関わるイオンチャネル複合体の構造解明を目的とし、その過程で膜結合分子の作用解析に有効な方法論の開発を目指した。 膜中の作用発現時の構造解析に際して、二つの隣り合うAmB分子の原子間距離を正確に測定することで全体の構造も推定できるものと考えた。二つのAmB分子を共有結合によって連結すれば、会合体を安定化でき、かつ隣り合う二つの分子を別々に標識することができるので、まず、種々のリンカーで連結させた二量体(2-6)の調製した。また、AmBとリン脂質分子の相互作用も重要とされているので、ジパルミトイルフォスファチジルグリセロール(DMPG)を用いてリン脂質の連結体(7)を調製することに成功した。これらの一部は非常に強い活性を示し、AmBと同様に膜中でイオンチャネル複合体を形成していることが明らかとなり、強い毒性を有するイオンチャネルのモデル研究に有用であると考えられた。
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