周辺アンテナポルフィリンから中心ポルフィリンへの高効率エネルギー移動を行う光合成中心モデルとなる大規模なポルフィリン自己組織化構造の構築を試みた。アンテナ系としてはピラジンを特異的に認識するテトラカルボキシポルフィリン2量体を用いることとし、このアンテナシステムを中心ポルフィリンの周辺に4つ配置できる自己組織化反応を試みた。この目的で中心ポルフィリンとして4つのピラジン基を有するテトラフェニルポルフィリン誘導体の合成を新たにおこなった。この新規ポルフィリンとテトラカルボキシポルフィリンのZn錯体を用いて電子スペクトルによる滴定実験を行った。其の結果ほぼ定量的に室温でピラジンポルフィリンとテトラカルボキシポルフィリン比1:8の巨大ポルフィリン自己組織化系が生成する事が明らかとなった。テトラカルボキシポルフィリン部の電子スペクトルは2量化したポルフィリンへのピラジンの特異的配位挙動を示すことから、形成したポルフィリン9量体は予想どおり4つのテトラカルボキシポルフィリン・Zn錯体の2量体が中心ポルフィリンを取り囲む形で組織化されたものと考えられる。更に、このポルフィリン9量体のついて蛍光スペクトルによる解析を行った。このポルフィリン9量体の溶液では、周辺に配置されたポルフィリンZn錯体の励起によってもその蛍光は極めて微弱なものであるのに対して、中心ポルフィリンの蛍光は強力に観測される。この結果は、周辺に配置されたポルフィリンZn錯体が光吸収のアンテナとして作用し、高い効率で中心ポルフィリンにエネルギー移動を行っていることを示している。これらの結果は生成した大規模ポルフィリン組織体が天然光合成中心に含まれるアンテナおよび中心ポルフィリンの相互配置と構造的類似を有しているばかりでなく、機能的にも光合成系の優れたモデルとなっていることを示している。
|