ヘムタンパク質のひとつであるペルオキシダーゼは、活性中心であるポルフィリン鉄錯体の近傍にアルギニン残基(Arg)が存在し、活性発現に寄与していると言われている。活性発現におけるこのArgの効果を調べるため、ポルフィリン鉄錯体を導入した49残基からなる両親媒性の新規設計人工タンパク質、βαβα(R)を設計合成した。βαβα構造体を形成したときにポルフィリン近傍にArgが配置できるような配列にした。βαβα(R)の対照化合物としてArgの位置にロイシンを配置したβαβα(L)も設計合成した。 この2種のポリペプチドは水溶液中でポルフィリン鉄錯体に2つのヒスチジンイミダゾール基が軸配位した吸収スペクトルを示した。βαβα(R)の水溶液中でのα-へリックス含率は、βαβα(L)のそれよりも低かった。メタノール中では両者が同様のα-へリックス含率を示したことから、疎水場に配置した親水性のArgがα-へリックス形成を阻害していると考えられる。 この2種のβαβα構造体のペルオキシダーゼ様活性を調べたところ、βαβα(R)のk_<cat>/K_m値はβαβα(L)と比べて2倍以上の値を示した。また、ペルオキシダーゼ様活性のpH依存性を調べるとβαβα(R)は中性pH付近で、βαβα(L)は酸性pH領域で活性極大を示した。ポルフィリン鉄錯体近傍のArg残基は構造体形成および酸化活性に大きく寄与していることがわかった。
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