研究概要 |
[目的]PEPカルボキシラーゼ(以下PEPCと略)はホスホエノールピルビン酸(PEP)に二酸化炭素(真の基質は重炭酸イオン)を固定し炭素数4つのオキサロ酢酸を生成する反応を触媒する。PEPCは植物ではとくに多様な生理的役割をもち、中でもC4植物やCAM植物においては光合成的炭酸同化に直接関与することから、基礎・応用の両分野から多くの注目を集めている。我々は最近PEPCの立体構造を世界で初めて解明し、ようやくタンパク工学的な研究が可能になった。本研究では、アロステリックな活性化因子および基質PEPと結合した状態での結晶化条件の探索およびX線結晶解析行い、さらに部位特異的変異導入による機能解析を行って炭酸固定反応機構を解明する。[研究経過および成果]1)活性型PEPCの結晶化とX線結晶解析。大腸菌のPEPCはアロステリックな活性化因子であるアセチル-CoAやフルクトース1,6-ジリン酸の存在下においてはじめて基質と結合するため、化学的に不安定なこれらの調節因子と安定な基質アナログを準備して結晶化を試みたが、良好な結晶が得られなかった。アセチル-CoAのアナログで安定なものを探索中である。また、アセチル-CoAを必要としないトウモロコシのPEPCについても結晶化をこころみ若干の知見を得つつある。2)立体構造に基づく部位特異的変異の導入と機能解析。触媒部位に位置すると思われる2つの柔軟なループに注目し、それらの機能解析をおこなった。とくに702-708のGlyに富む領域についてその触媒における役割を解明し、さらに活性の高い酵素を作出することに成功した。
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