研究課題/領域番号 |
10480159
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
月向 邦彦 広島大学, 理学部, 教授 (10023467)
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研究分担者 |
巌倉 正寛 工業技術院, 生命工学工業技術研究所, 室長
大前 英司 広島大学, 理学部, 助手 (30284152)
片柳 克夫 広島大学, 理学部, 助教授 (20291479)
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キーワード | ジヒドロ葉酸還元酵素 / ダイナミックス / ループ機能解析 / アミノ酸置換 |
研究概要 |
大腸菌ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の部分比容と断熱圧縮率をの温度依存性は、他のタンパク質に比べて2〜3倍大きく、円二色性や蛍光スペクトルの温度依存性との相関が認められた。このことは、DHFRは天然状態においてすでにモルテングロビュール様の構造にあることを示している(Chem.Lett.507(1999))。天然状態のDHFRと各種リガンド複合体の圧縮率は、X線結晶構造から得られた分子内キャビティー量とよい相関があり、キャビティーがゆらぎの発現に重要な役割を演じていることがわかった(Biochim.Biophys.Acta印刷中)。3つのフレキシブルループ中に存在するGly67,Gly121,Ala145を種々のアミノ酸に置換したところ、圧縮率が大きく変化しており、ゆらぎを大きくする変異は酵素活性の上昇をもたらすことがわかった(J.Biochem.投稿中)。67位変異体の水素/重水素交換速度を質量分析計で測定したところ、圧縮率の大きい変異体ほど交換速度が早いことを見出した(学会発表済)。また、変性の自由エネルギー変化の小さい(安定性の低い)変異体ほど、分子シャペロンGroELとの相互作用が強いことがわかった(学会発表済)。X線構造解析の結果、67位や121位での変異により、遠く離れた部位での温度因子やキャビティー分布が変化することがわかった(学会発表済)。これらの結果は、リガンドの結合やアミノ酸置換による局所構造の違いが、キャビティーの変化をとおして分子全体の構造のゆらぎに影響を及ぼしており、本酵素の機能発現にフレキシブルループが重要な役割を演じていることを示している。
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