1.分泌系路の最初期過程である小胞体においては構造形成とチオール基の酸化が平行して進行すると考えられてきた。そこで、その細胞内でのkineticsを解析したところ、蛋白の内腔への隔離と酸化が時間的に共役していることを明らかにした。そこでその小胞体内での酸化を解析する系を作り調べたところ、酸化は小胞体膜のintegrity以外外部からの何ら酸化的なcofactorを何も必要とせず、またこれは小胞体に特有の活性であることを見いだした。2.構造形成を終えた分泌蛋白が小胞体から出てゆく際に関与する可能性のある分子としてERGIC53が注目されている。HepG2細胞をモデルとしてその関与を調べたところ、この分子は糖鎖のクラスターを持つ分子の小胞体からの汲み出しに関係するとされるが、糖鎖を3個しか持たないa1アンチトリプシン(AT)と相互作用し、細胞内での動態に関係することが示された。そこでERGIC53の小胞体からの移行がATの移行と直接関係するかどうかを明らかにするために、BrefeldinA処理からの回復過程におけるCOPII顆粒に依存するfoldした両分子の小胞体からの移行のkineticsをそれぞれGFPtagをつけた分子を用いて単一細胞で比較した。その結果、ERGIC53の小胞体networkからの離脱は3分以内にほぼ完了する極めて速い過程であるのに対し、ATはゴルジ領域に観察されるまでに10分以上を要し明確に異なるkineticsを示した。(このATのkineticsはwtATのfolding後のERGIC/Golgi領域への移行と一致する。)むしろゴルジ領域への移行の前段階に同時期に両分子は核辺縁へのシグナルの増加が観察された。
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