1)分泌系での構造形成は酸化と同時に進行する。その酸化の機構を解明するために、新生トランスフェリンをモデルとしてジスルフィド結合の形成を調べる実験系を作成し解析した。その結果、酸化は生合成直後に完了するが、内腔全体が酸化されるのでなく、むしろ新生分子に選択的に起こることが観察された。さらにこの過程は特定の化合物によりブロックされることを見いだし、その解析により、翻訳と同時に起きる酸化と翻訳後に起きる酸化は別の機構により行われることを明らかにした。後者はフラビン化合物による阻害解除を受け、フラビン酵素であるErolLが関与することを示した。 2)メラノソームの主要な膜タンパクであるチロシナーゼの正しい構造形成はcalnexinに依存することを示した。この酵素はOCA1の原因分子であることが知られている。これらの先天性変異においてはこの酵素はcalnexinとの相互作用により小胞体に係留されるが解離と同時に分解され、これはプロテオソーム活性に依存することを報告した。 3)このプロテオソームによる分解はマンノースのトリミング、特にMan9から8への変化に依存することが、これまで阻害剤の実験により示されてきた。ストレスによる誘導を受ける分子の解析でαマンノシダーゼと相同性を持つが活性を欠いている分子EDEMを見いだした。EDEMはミスフィールドするantitrypsinに結合し、さらにこれの過剰発現は、プロテオソームによる分解を受けるantitrypsinの分解を促進した。よって、EDEMがmisfoldした分子のacceptorである可能性を報告した。 4)先にcalnexinのアイソフォームでspermatogenesisにおいて特異的に発現するcalmeginの遺伝子破壊マウスにおいては精子の卵子透明体への結合が抑制されることを報告した。今回、その原因は精子表面に存在する特定分子のヘテロオリゴマー形成が阻害されることによることを示した。
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