抗-細胞接着活性を持つマトリックス分子が見つかっているが、その機構は不明である。プロテオグリカン、PG-Mは、そのコンドロイチン硫酸鎖部分でCa^<2+>依存的にこの活性を示す。コンドロイチン硫酸鎖と特異な結合活性をもつ分子としてannexin VIを同定し、細胞表面のシグナルレセプター分子であるとの仮説のもとに、以下の実験を行った。annexin VI非発現のヒト細胞A431にそのcDNAをトランスフェクトし、発現細胞を得て、FACS解析により細胞表面における存在と、コンドロイチン硫酸結合培養ディッシュへの接着活性からレセプターとしての関与の可能性を認めた。さらに、他の糖鎖には結合しなく、また他のannexinにはないannexin VIに特有な構造がこの結合に必要なことも明らかにした。PG-M、またコンドロイチン硫酸を結合させた磁気ビーズを上面、また下面より細胞に接触させて、ビーズへのannexin VIの集合、続くシグナル系分子の集結から、annexin VIのシグナル伝達系を解析する独自の方法を開発し、適用したが、集合は観察されなかった。むしろ、フィブロネクチンなどの接着基質コートビーズにannexin VIの集合変化が観察された。また既知のシグナル伝達抑制剤(例、HA1004、ハービマイシンなど)の効果を入手可能なものについて調べたが、何れもがPG-Mによる抗-細胞接着活性を抑制できなかった。また新発見のPyk2のファミリー分子、CAKについても関与の証拠が得られなかった。現在、活性部位であるコンドロイチン硫酸鎖の結合本数の異なるPG-Mスプライスドフォームを細胞に強制発現させ、細胞への影響を解析、さらに相同遺伝子組換えによりPG-M発現の異常マウスを作製してin vivoで観察される異常を解析し、PG-Mの抗-細胞接着活性の性質と細胞機能を明らかにするべく実験を行っている。
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