研究概要 |
新規チロシンホスファターゼPTPεCが,単球分化過程で特異的に発現し,その分化・増殖・細胞死の調節に関わることを明らかにした。PTPεC遺伝子の導入により,M1白血病細胞のIL-6依存性細胞増殖やアポトーシスが抑制される。このときJak-STATシグナリングが選択的に抑制されるが,MAPKの方は抑制されなかった。この抑制は,gp130を介するIL-6,LIFシグナリングの他,IL-10についても確認された。これに対し,インターフェロンβ,γはいずれも効果を示さず,サイトカイン特異性を示した。またセリン/スレオニンホスファターゼPP1の新規阻害タンパクI-4のcDNAクローンを単離し,その構造/機能相関を明らかにした。I-4は,これまでに報告されたいずれのPP1阻害タンパクよりも阻害作用が強い。PP1の触媒サブユニットPP1CとI-4とは,少なくとも3ヶ所で相互作用し,このうち,N末側のサイト1は,PP1Cとの強い結合に必須であるが,阻害作用の発現には関与せず,これに対し,C末側のサイト3は,PP1Cとの結合能力は微弱であるが,この相互作用が阻害活性の発現に最も重要であった。I-4は正常組織には発現せず,HepG2やHela細胞などのある種のがん細胞に強く発現していた。I-4はI-2に相同性を示すが,いくつかの点で性状を大きく異にし,PP1の重要な調節因子と考えられてきたI-2の機能や意義の解明にも役立つと考えられる。2重基質特異性ホスファターゼDSPについては,現在7種の新しい遺伝子の存在を明らかにした。これらの構造,機能,調節を目下調べている。
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