研究概要 |
われわれは,新規の2重基質特異性ホスファターゼMAPKホスファターゼ-7(MKP-7)を見出し,その構造・機能・局在を解析した。MKP-7は,構造および機能の上で,以下のような特徴を有する。 1.特有なMKPドメインを有する。すなわち,ローダネース様ドメインと触媒ドメインをもち,前者にERKおよびp38結合領域としてのKIMモチーフを,後者にJNKおよびERK結合領域としてのδ様ドメインと触媒モチーフを含む。 2.基質特異性は,ERKに対するよりもはるかにp38に対して高く,JNKにはp38よりもさらに高い特異性を示した。 われわれはまた,トウトマイシンについて,その合成中間体や誘導体を用いて構造/機能相関を調べ,阻害活性とアポトーシス誘導能は,同一分子内の互いに異なる部分構造に帰因することを明らかにした。さらにトウトマイシンのアポトーシス誘導には,分子内のスピロケタールが重要な働きをしていることを示唆した。続いて,合成した10種類のスピロケタール化合物を用いて,アポトーシス誘導活性を調べ,スピロケタール化合物の構造とアポトーシス誘導能との相関を明らかにした。さらに,トウトマイシン構造中のスピロケタール部分を欠くトウトマイセチンが,これまでに報告された50種に及ぶホスファターゼ阻害剤の中で,もっとも特異性の高いPP1阻害活性を示すことを見出した。現在これを用いて,情報伝達系に対するPP1作用の解析を進めている。
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