研究概要 |
Cdc7-Dbf4キナーゼ複合体は真核細胞の染色体複製開始を制御する。我々は、Cdc7キナーゼに類似する、キナーゼ複合体を分裂酵母、マウス、ヒトにおいて同定し、その機能解析を行ってきた。本研究により以下の事実が明かとなった。 1 Cdc7タンパク質の発現は細胞周期を通じてほぼ一定であるが、制御サブユニットDbf4/ASKの発現はM-G2期で低く、S期に高い。これにしたがって、Cdc7キナーゼ活性も同様な細胞周期の変動をする。 2 Cdc7キナーゼはMCM複合体のMCM2タンパク質を特異的にリン酸化する。 3 MCM2はCdkによってもN端の特異的な部位をリン酸化され、このリン酸化により、MCM2のCdc7によるリン酸化が著しく促進される。すなわちMCMはCdkとCdc7の共同作用によりリン酸化され、活性化されると考えられる 4 Cdc7遺伝子ノックアウトマウスは胎生3.5から6.5日の間に死亡する。また、Cdc7遺伝子欠損ES細胞は致死である。 5 ES細胞においてCdc7を誘導的に欠失させると、直ちに細胞増殖とDNA合成が停止し、細胞はその後細胞死を起こした。これは、Cdc7欠損によるS期停止の結果、異常な複製構造が蓄積し、それがチェックポイント反応を誘導したと考えられる。このとき、p53蛋白質の蓄積も観察された。 6 Dbf4/ASK活性制御サブユニットに保存された3つのモチーフ(N,M,C)を同定しこのうちMとCがそれぞれ独立に触媒サブユニットに結合し、キナーゼ活性化に必要であることが明かになった。Nはクロマチンとの相互作用に関与することが示唆された。
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