研究概要 |
ラットミトコンドリア移行型セリン:ピルビン酸アミノ転移酵素前駆体(pSPTm)の分子内に含まれる2種のオルガネラ移行配列(ミトコンドリア移行配列,MTS,とペルオキシソーム移行配列,PTS)のうちMTSのみが機能を発揮でき、結果的に選択的ミトコンドリア局在がもたらされる現象を、申請書に記載の研究計画に沿って解析し、以下の結果を得た。 1.SPTのMTSと他の酵素の含まれるPTSとの関係 MTSによるPTSの抑制が他の酵素に含まれるPTSに対しても見られるかどうかを調べるために、MTSを含むN末端側をpSPTmに、C末端側をPTS1を含む尿酸酸化酵素にしたキメラ蛋白質を作成し、in vitroペルオキシソーム取り込み系でPTS機能の抑制の有無を検討した。その結果、尿酸酸化酵素のPTS1のペルオキシソーム標的機能もSPTのMTSの付加により抑制されることが示され、MTSによるPTS機能の抑制はSPTに限った特殊な現象ではないことが示された。 2.MTSの有無が蛋白質の高次構造に与える効果 一般にミトコンドリア蛋白質前躯体は変性状態でミトコンドリアへ運び込まれると考えられている。一方、ペルオキシソーム酵素は成熟型で、しかも折り畳まれた状態でペルオキシソーム膜を通過するという報告がある。MTSを含むかどうかで高次構造に違いがあるかどうかをプロテアーゼに対する感受性で解析した所、MTSを含む前躯体型酵素が含まない成熟型酵素に比べ、格段にプロテアーゼ感受性が高いことが示された。同様の結果はキメラ蛋白質でも観察された。PTSの機能発現にはおそらく蛋白の折り畳みが必要であり、MTSの存在が蛋白質の変性、PTSの抑制、ミトコンドリアのみへの輸送を引き起こすと考えられた。
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