研究概要 |
硫酸還元菌は、ウロポルフィリノーゲンIII脱炭酸酵素活性をもたず、S-アデノシルメチオニオン依存性にプロトポルフィリンIXを生合成する。本菌以外にこのような生合成経路は知られておらず、その完全な解明をめざしている。今年度の研究で以下の成果が得られた。 1、 ウロポルフィリノーゲンIIIは、他の生物と同様に、5-アミノレブリン酸から生合成される。グルタミン酸-1-セミアルデヒドの新しい化学合成法とその分析法を確立した。グルタミン酸-1-セミアルデヒドから5-アミノレブリン酸が生合成されるか詳細に検討している。予備的な実験結果は、C_5経路(グルタミン酸-1-セミアルデヒドはこの経路の中間体)による5-アミノレブリン酸の生合成を示唆している。 2、 ウロポルフィリノーゲンIIIにS-アデノシルメチオニオンのメチル基を転移してプレコリン-2を生成する反応を触媒する酵素の迅速精製法を確立した。本酵素は、ホモダイマーでサブユニットの分子量は44,000である。本菌では、プレコリン-2がプロトヘム合成とシロヘム合成の共通の中間体と考えられる。本酵素は、精製が進むとともに活性が低下し、また、N-エチルマレイイミドやプロテアーゼ阻害剤のPMSFなどで容易に不活性化される。遺伝子のクローニングと高発現系の確立を急いでいる。 3、 本菌の特異な生合成経路を解明するためには、極めて酸化・分解され易いプレコリン-2や(12,18-ジデカルボキシ)プレコリン-2を反応容器の中で定量的に生成させなければならない。反応液中の酸素濃度のμMレベルでの制御と測定のために、カテコール2,3-ジオキシゲナーゼを利用する方法を確立した。また、カテコール2,3-ジオキシゲナーゼのX-線結晶解析をおこない、その立体構造と基質(カテコールと酸素分子)活性化機構について詳しく検討した。
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