研究概要 |
硫酸還元菌は、水田などの土壌、海洋の堆積物、廃水、ヒトを含む動物の腸管など、自然界に広く分布し、それぞれ重要な役割を果たしている。硫酸還元菌におけるヘムの生合成は、ポルフィリン骨格へのメチル基の導入を含む先例のない経路で行われており、現在のところ、本菌群でしか確認されていない。本研究は、この新規生合成経路の全貌を解明し、進化論的な位置を明らかにすることであり、以下の成果が得られた。 1.硫酸還元菌を含む嫌気性菌のヘム生合成は、遺伝子のレベルで全貌が既に解明されている場合でも、in vitroで各遺伝子の産物である酵素の機能が確認されていないことが多い。本研究は、酵素活性をin vitroで測定し反応機構を明確にするというコンセプトで進めている。生合成中間体の高感度分析定量法を確立した。ポルフィリンについては、メチルエステル化しない遊離型のままでの分析が不可欠で、多波長モニターによるスペクトル分析を導入した。(MS/MS分析可能な質量分析器をこの系に直結することを急いでいる。) 2.二原子酸素添加酵素であるカテコール2,3-ジオキシゲナーゼを利用し、酸素濃度レベルが0.1μM以下の厳密な嫌気下での反応を、簡易にかつ多数の試料について同時に行う方法を確立した。本酵素のX-線結晶解析をおこない、その立体構造と基質(カテコールと酸素分子)活性化機構について詳しく検討した。微量酸素の測定と制御のために、本酵素のタンパク質工学的改変と基質のスクリーニングを進めている。 3.新中間体(12,18-)ジデカルボキシプレコリン-2を経由する新規ヘム生合成経路の仮説を提案した。 4.S-アデノシルメチオニン-ウロポルフィリノーゲンIIIメチル基転移酵素などの遺伝子の単離を進めてきた。ゲノム解析のデーターを参考に、今後系統的に進める予定である。
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