昨年度、gp5-gp27ヘテロ6量体の結晶化に成功した後、セレノメチオニンを用いた同型置換体の作成を試みてきたが、収量に問題があり、まだ成功していない。これと並行して古典的な重原子同型置換も試みており、イリジウムによる同型置換体が有望である。また、元のヘテロ6量体も精製度を上げるなどにより、さらに大きな結晶が得られるようになってきている。同型置換体は、もしヘテロ6量体が時間がかかりそうであれば、gp5のC末端が除去されて生じるgp5-gp27ヘテロ2量体の構造を解いてからその位相を利用して解くことも考えている。この間、gp5のプロセッシングとgp5-gp27間の相互作用の解析も進展し、gp5のプロセッシングが不可逆であって温度に依存してpHには依存しないのに対し、gp5とgp27の相互作用は可逆的でpHに強く依存し、pH8では会合しているが、pH6ではgp27は完全に解離することが分かった。なお、同複合体の結晶系はR_<32>でa=b=275.7A、c=386.7Aである。他方、基盤の開始複合体であるgp10-gp11複合体およびgp15複合体の結晶化にも成功した。前者は基盤周辺部(ウェッジ)の開始複合体で、我々がこれも各3分子からなるヘテロ6量体であることを示している。後者はテイルの完成に必要な2つの遺伝子産物の一つで、電子顕微鏡観察で、リング構造を形成することを見いだした。この構造体はテイルのコネクターを構成すると考えられ、現在もう一つのテイルの完成に必要な蛋白質であるgp3の大量発現、精製を進めている。gp57Aは未だに結晶化に成功していないが、これは高濃度になるとさらに会合する傾向のあるためであると考えられ、現在C末端欠失蛋白質の発現を行って結晶化することを計画している。今年度は構造決定の見通しが立ったことがもっとも大きな収穫であったが、今後さらに新しいプロテオームの手法や相互作用解析の解析により分子集合過程の理解が進むと期待される。
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