研究概要 |
F1ATPase(サブユニット構成α3β3γδε、分子量38万)は,呼吸鎖が形成する、膜を隔てた水素イオンの濃度勾配をATPに変換するATP合成酵素の可溶性部分である.γサブユニットのα3β3部分に対する回転により巧妙に制御されるこの酵素の触媒機構を構造の側面から理解するため、F1のα3β3γ、α3β3γε部分複合体の種々のリガンド結合状態の構造決定を目指し、今年度はα3β3γ複合体については回折実験、α3β3γε複合体については結晶化、回折実験を行った. α3β3γ複合体結晶については、クライオの条件を検討したあとSPring8で回折実験を行った.実験室のX線源で20Åの回折模様を与えるこの結晶はSPring8では10Åの回折を与えた.更に高分解の反射を与える結晶化条件を検討している. 平行して実験を行ったα3β3γε複合体はSPring8で4.5Åの回折を与えることがわかった.なお、この複合体は結晶化条件を大規模、系統的に探索した結果、種々のリガンド結合状態の結晶が得られている.現在0.5mMADP存在下でできた結晶を中心に解析を進めている。0.2x0.2x0.1mm程度の中程度の大きさの結晶を液体プロパンで凍結後、100Kの窒素ガスのon/offアニールにより凍結結晶を準備した。格子定数は225.3,225.7,224.6Å,94.1,117.5,117.8度(P1)と決定された。単位格子中に4(1)22の回転対称で配置している8個のα3β3γε複合体が存在する。分子置換法による解析が進行中である.
|