タバコモザイクウイルス(TMV)の増殖の分子機構を解明するために、TMVの増殖に関与する宿主因子の同定をシロイヌナズナを用いた宿主遺伝学により試みた。本年度は、TMVの1細胞内での増殖を低レベルに抑制するシロイヌナズナtom1あるいはtom2変異に対応する野生型遺伝子の同定を行った。TOM1遺伝子座のファインマッピングを約3800株のF2植物を用いて行い、TOM1遺伝子座の存在しうる範囲を約22kbpにまで狭めた。この領域をカバーするゲノミックDNA断片でtom1変異株を形質転換し、変異が相補されることを示した。さらに、最小相補領域に存在する転写単位をcDNAクローニングとシークエンシングにより同定した。結果としてTOM1は複数回膜貫通型内在性膜蛋白質をコードすることが明らかになった。TOM2遺伝子座については、変異が第1染色体上の約20kbpの欠失によることを見いだし、その領域に対応するゲノミックシークエンスを決定した。その中には複数の転写単位が存在したので、そのうちどれがTOM2に対応するかを明らかにするために欠失領域に対応する種々のゲノミックDNA断片でtom2変異株を形質転換し、約9kbpのDNA断片が変異の相補能をもつことを見いだした。来年度に予定している試験管内TMV RNA複製系の構築の準備として、TMV(Cg株)の複製に関与するウイルス側蛋白質に対する抗体を作製した。
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