研究概要 |
我々はウイルスの増殖に関与する宿主因子を同定するためにタバコモザイクウイルス(TMV)に耐性を示すシロイヌナズナ変異株tom1およびtom2を単離し、これらに対応する野生型遺伝子TOM1,TOM2Aの産物が1細胞内でのTMV RNA複製を担う因子である可能性が高いことを示した。さらに、去る2年間の本研究によりTOM1遺伝子とTOM2A遺伝子のクローン化と構造解明に成功し、それらが複数回膜貫通型内在性膜蛋白質をコードすることを明らかにした。本年度は、残るもう一つの遺伝子TOM2Bの同定と、これら宿主因子がTMV RNA複製において、あるいはシロイヌナズナ自身において果たす役割を解明することを目指した。tom2変異を相補するDNA領域の検索によりTOM2B遺伝子の大まかな位置は既にわかっていたので、その領域内に位置する転写単位をcDNAクローニングし、TOM2B遺伝子が123アミノ酸からなるポリペプチドをコードすることを明らかにした。本意電子産物のアミノ酸配列は他の機能既知蛋白質との類似性あるいは機能を推測できるような著しい特徴をもたなかった。また、TMV感染植物から抽出したTMVRNA-dependent RNA polymerase画分にTOM1およびTOM2A蛋白質とTMV130k蛋白質が共存するという予備的結果を得た。これは、TOM1およびTOM2A蛋白質がTMVの複製複合体に含まれる可能性を支持する。さらに、TOM1の出芽酵母における機能的ホモログ遺伝子を取得する目的で、その生育がTOM1の発現に依存的になった変異株を検索し、候補株を得た。
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