研究概要 |
本研究では、タバコモザイクウイルス(TMV)の1細胞内での増殖をサポートするシロイヌナズナTOM1およびTOM2遺伝子の同定と遺伝子産物の機能解析を行った。ポジショナルクローニングにより、TOM1は291アミノ酸からなる7回膜貫通蛋白質と予想されるポリペプチドをコードすることを明らかにした。また、tom2変異株の解析からTMVの増殖抑制形質の原因遺伝子として独立な2つの遺伝子、TOM2AおよびTOM2Bを同定した。TOM2A遺伝子は280アミノ酸からなる4回膜貫通蛋白質と予想されるポリペプチドを、TOM2B遺伝子は122アミノ酸からなるポリペプチドをコードをコードしていた。TOM1,TOM2A,TOM2B蛋白質がいかにしてTMVの増殖を正に制御するかを知る目的で、これらがTMVゲノムにコードされた蛋白質と相互作用するかをSos recruitment assayにより検討したところ、RNA複製に関与するTMV130k蛋白質のヘリカーゼドメインとTOM1が相互作用することが示唆された。TMVを含め、知られる限り全ての高等真核生物プラス鎖RNAウイルスは細胞内の膜に結合した複合体で複製するが、TMVにコードされた複製蛋白質が膜に局在する機構は明らかでなかった。上記の結果から、TOM1がTMVの複製複合体の一部をなし、単独では膜結合性を欠くTMVの複製蛋白質を膜に繋ぎ止める役割を担う可能性が考えられた。また、tom1変異が遺伝子産物の活性をほぼゼロにするような変異であったにもかかわらず、TMVの増殖はゼロにはならなかった。本研究では、tom1変異株においてTMV増殖をサポートする残存活性が、シロイヌナズナゲノム上に存在するTOM1類似遺伝子TOM3に起因すること、従って、TOM1/TOM3の機能がTMVの複製に必須であることも明らかにした。
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