研究概要 |
真核細胞、原核細胞を問わず、染色体複製開始に先立ちは複製起点上に多くの蛋白質からなる複製開始複合体が形成される。出芽酵母でこの複合体形成の中心になるDNA結合蛋白質としてORC(orgin recognition complex)が同定され、この複合体は高等真核細胞でもよく保存されている。分裂酵母で我々はORCのサブユニットの一つORC5のホモログを同定し解析をおこなった結果以下の結果を得た。 1.Orp5をdepleteすると不完全な染色体複製が起こる。 2.Orp5の高温感受性変異株の単離と解析の結果、ORCが複製開始の他にS期の進行、DNAdamage check point control,M期の進行といった細胞周期の進行全般にわたり重要な働きをしていることが明らかになった。 3.Two-Hybrid法によるスクリーニングの結果、複製にともなうクロマチン構造の形成を行うchromatin assembly factor1(CAF1)の分裂酵母ホモログのサブユニット(Fip1と命名)がOrp5と相互作用することを発見し、さらにOrp5、Caf1が協同してmating locusのsilencingに関与していることを明らかにした。 以上の結果からORCは染色体開始のみならず正常な細胞周期の進行に必要なクロマチン構造の形成、維持に深くかかわると考えている。現在この仮説を確かめるべく、遺伝学的、生化学的解析を進めている。
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