研究概要 |
本研究計画では、解像力数Å-数nmの原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)を用いて、特定の遺伝子の"高次構造・機能協関"の解明を目指してきた。本年度は以下のような結果を得た。 1.約2万塩基対からなるβグロビン遺伝子のエンハンサー領域(Locus Control Region(LCR))において、調節タンパク質Bach1/MafK複合体は塩基配列により予想される複数の結合部位にそれぞれ同時に結合しDNAループを形成すること、そのためには、Bach1分子中のタンパク質会合領域(BTBドメイン)が必要であることを示した(Yoshida et al,(1999)Genes to Cells,4:643-655)。 2.Bach1/MafKヘテロダイマーが2個づつ、計4個のヘテロダイマーが複合体となってDNAループを形成し、その際、ループの位置がスライドするという、し、クロマチンリモデリングを含んだ"Kiss and Pull"モデルを提唱した(Yoshimura et al,J.Electron Microscopy 印刷中)。 3.数千塩基対からなるDNAとコアヒストン(ヒストンH2A、H2B、H3およびH4 各2)とからヌクレオソームを再構成し、1つのヌクレオソームあたり146塩基対のDNAが取り込まれることを定量的に可視化し、ヌクレオソームのポジショニング、ヒストンH1によるヌクレオソームのコンパクションも構造生物学的に実証した(Sato et al,(1999)FEBS Lett.,452:267-271)。 4.AFMの解像力はスキャニング用チップの質(先端の鋭利さ(通常15nm程度)や形等)に依存する。そこで、我々は大阪府立大学の中山らのグループと共同でチップの開発に努めてきた。最近、我々はコマーシャルに得られるチップの先端にカーボンナノチューブ(直径5nm)を付着させる方法を開発した(Akita et al.,(1999)J.Phys.D:Appl.Phys.,32:1044-1048)。これにより解像力は大きく上昇し、DNAのよじれ等の解析においてもDNA鎖の上下関係がハッキリ可視化できるようになった。
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