研究概要 |
本研究では、解像力数Å-数nmの原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)を用いて、特定の遺伝子の"高次構造・機能協関"の解明を目指してきた。本年度は以下のような結果を得た。 1.Bach1/MafKヘテロダイマーが2個づつ、計4個のヘテロダイマーが複合体となってDNAループを形成し、その際、ループの位置がスライドするという、し、クロマチンリモデリングを含んだ"Kiss and Pull"モデルを提唱した(Yoshimura et al.,J.Electron Microscopy,49:407-413.)。 2.AFMの解像力はスキャニング用チップの質(先端の鋭利さ(通常15nm程度)や形等)に依存する。そこで、我々は大阪府立大学の中山らのグループと共同でチップの開発に努めてきた。昨年、我々はコマーシャルに得られるチップの先端にカーボンナノチューブ(直径5nm)を付着させる方法を開発したが、これにより解像力は大きく上昇し、ヌクレオソームやDNA結合タンパク質複合体の会合状態を可視化・解析できるようになった(J.Electron Microscopy,49:415-421;Proc.Nat'l Acad.Sci.USA,97:14127-14132.)。 3.DNAのスーパーコイル状態は転写や複製、組み換え等に重要であることが知られているが、具体的にどのような役割を果たしているのかは不明であった。我々は、複製開始タンパク質が負にスーパーコイルを巻いたプラスミドの複製開始点に結合し、開烈やトポイソメラーゼ活性を有することなく弛緩を引き起こすことを見出した。この複製開始タンパク質はDNAを巻きつけることもないことから、タンパク質結合によるDNAの相転移説を提唱した(Biochemistry,39:9139-9145.)。 4.依田・岡崎グループとの共同で、CENP-AとヒストンH2A、H2B、H4とからなるセントロメアヒストン8量体にDNAを巻かせたヌクレオソーム、および、コアヒストン(H2A、H2B、H3、H4)8量体にDNAを巻かせたヌクレオソームについて、DNAの巻きかたについて定量的可視化を行なった(Proc.Nat'l Acad.Sci.USA,97:7266-7271.)。現在のところ、「1つのヌクレオソームあたり、コアヒストンでは^〜140塩基対のDNAが、セントロメアヒストンでは^〜100塩基対のDNAが取り込まれる」というデータを得ている。
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